何のために勉強するの?何を目指して学ぶべき?そんな疑問が浮かんで受験勉強の手が止まっている人はいませんか。
ただ「この科目に興味がある」、「この分野は面白い!」そんな内側から湧き上がる気持ちに素直に従って勉強してもいいのです。
ここでは受験勉強で「真の学力」を磨くと、その後の生活がどれほど色鮮やかになるのか、研究者の目線からお話します。
面白くない人生を歩む人と面白い人生を歩む人の違い
私は、塾講師をする前は東大大学院で研究をしていました。
研究職というと、特殊な業界のように感じる人もいるかもしれませんが、受験生との共通点はたくさんあります。
まずは、その一つをお話しましょう。
研究の世界の魅力は、いつも新たな発見と創造性に満ちていることです。
業界の最先端のところで、まだ誰も考えていないテーマを掘り起こし、自分のアイデアがカタチになるのです。
研究者は毎日、似たような実験をしているイメージがあるかもしれませんが、実際は変化の日々です。
常に新しいことを探し求め、昨日とは違う取り組みをします。
いつも通りの手順で仕事をして「はい終了、おつかれさん」という世界ではありません。
毎日、同じことを繰り返す生活に安心するような人には向かない世界ですね。
受験生の皆さんも、研究者のように日常から小さな発見を楽しみ、面白がることができたら、受験勉強も刺激的になるのではないでしょうか。
日々、新しいことを学びながら、前へ向かって自分を変化させていけるのです。
もちろん時には後戻りしたり、反省したりすることも必要ですが、何か新しいことをやってやろう、面白いことを見つけてやろうと思っていれば、参考書もまた違ったように見えてきます。
研究職に限らず、仕事を楽しめる人と、勉強を楽しめる人との共通点があるとしたら、そんな部分だと思います。
一見、単調に見えることの中に面白いことを見つけられると、毎日が一気に新鮮になります。
受験勉強も、見方によっては同じことの繰り返しです。
やるべき課題も目指すゴールも決まっています。
そういった決められた範囲の中で、成績をあげるコツをつかんでやろうって気持ちになれるかどうか。
また自分の力で課題を発見し、改善策を試行錯誤できるかどうか。
そういう視点を持つことができれば、もはや勉強は単調なものではなく、クリエイティブな時間に変わります。
勉強を通して、自分自身の内面をどんどん磨いていくことができるのです。
そして、一見、面白そうには思えない事の中から、面白いことを発見する力は、社会の役に立つ人間になるために欠かせない能力です。
自分が行動しなくても、目の前に面白いことが提示されるのは、せいぜい高校生まで。
大学生ともなれば、自分で自分の人生を面白くできる能力が求められるのです。
その力があって始めて、自分らしい、実りある人生を歩むことができます。
ぜひ受験勉強を通して発見する力を磨いてください。
さらに言えば、受験を通して鍛えられる能力はそれだけではありません。
試行錯誤の繰り返しの中で「自己分析力」も高まります。
つまり、「自分は何が得意で、何が苦手なのか」、「どういう時に能力を発揮できるのか」といったことを、客観的に見ることができるようになるのです。
これは社会に出てからも必須となる力。
受験勉強への向き合い方次第で、学力だけではなく、将来の可能性までも広げることができるのです。
感動する心を忘れない人が、成績を上げられる
受験生となると、やはり日々の勉強に対してどれだけ成績があがっているかは気になることでしょう。
私も受験生時代に二浪していますから、成績に対して敏感になる気持ちもわかりますし、皆さんの心境はよく理解できます。
ですが、今までたくさんの受験生を見てきて思うのは、目の前の成績の上がり下がりだけにとらわれていない人の方が成績が伸びやすいということです。
もちろん、自分の弱点から目をそらすことはできませんが、それだけが目的になってしまうと勉強が辛くなります。
「あぁ~成績が伸びない」「こんな成績でも大丈夫かな…」って心配になったり、気持ちが焦ったりしてしまうのです。
そんな時こそ、かつて勉強で感動した記憶を思い出してほしいですね。
大きな出来事でなくていいのです。
「新しいことを知るって楽しい」、「わからなかったことが、わかるようになるってスゴイ」って思えた経験は誰でも一つはあるはずです。
私の場合、化学に興味をもった原点は小学生の頃。
学研の付録でついていた「色水変色セット」で、酸と塩基の実験をしたことですね。
薬品を混ぜると赤くなったり、青くなったりする。
その色が変化するのを見るのが楽しかった。
中学生の頃は、化学部に入って火山の模型をつくって噴火実験をしました。
もちろん、教室で爆発させるわけにはいきませんから、もくもくと煙を出すところまでです。
あの興奮は、今でも忘れません。
世の中の不思議を解明するのが好きな子どもでしたね。
学生時代に興味深かったのは、虚数の誕生です。
虚数のおかげで、私たちの生活環境が成り立っています。
言い方を変えると、人類は虚数に支配されているのです。
知れば知るほど、世の中にあるモノ、身近な道具から遠くの自然現象まで、世界がどんどん違って見えるようになりました。
私は、あらゆる分野で知りたい欲求が強かったので、勉強を苦に感じることは少なかったんです。
高校生の教科書の内容が世の中の進歩と連動している、そう思えばツマラナイ勉強なんてこの世界にはありませんでした。
受験勉強は、スタートの思いが大切です。
さらに、プロセスでどんな景色に出会うかも大切です。
ですから、それまで見えなかった景色を見せてあげることが、私たち講師のひとつの役割だと思っています。
「うわっ!化学ってこんなに私たちの生活に繋がっていたんだ」、「数学でそんなことまで証明できるの!?」といったように。
ただし、やはり新しい景色に目を向けるのは、受験生であるあなた自身ですから、一つの問題をサラっと終わらせず、ちゃんと向き合ってほしいのです。
もっと見るべきところがあるでしょ?ちゃんとポイントを見つけているか?と聞きたいですね。
ただひたすら問題を解いて、採点して、点数の上下に一喜一憂して終わり、といった無味乾燥な受験勉強はしてほしくないですね。
せっかく勉強に全情熱を注げる受験生という立場なのですから、点数だけでなく、そこから何かスゴイものを得てやる、と貪欲になってください。
努力することが「苦労」ではなく、「楽しさ」や「快感」を感じるようになったら、本物の実力がついてきた証拠です。
成績という結果が出るのは、そこからです。
どうすれば納得のいく人生を歩めるか
もちろん、子どもの頃に感動した体験を思い出しただけで、目の前の入試問題が解けるようになるかと言えば、そんな甘いものではありません。
年齢が上がっているのですから、当然ですね。
年齢とともに課題も難しくならないと、成長していることになりません。
あなたはより難しい課題に挑戦したい!と思えていますか?
もし、志望大学の決め方にしても、勉強への向き合い方にしても、「無難に、無難に…」と考えるようになっているなら、少し立ち止まって自分に問いかけてみてください。
失敗を恐れる気持ちをスタート地点にしていないか、と。
「自分はいつも、これぐらいの成績だから」という考え方から、未来に期待をもたないようにブレーキを踏んでいないか?と。
「これぐらいの成績」というのは、現時点でのあなたにとっての事実かもしれません。
その成績の枠内をキープすれば、相応の大学には合格できるでしょう。
ですが、あなたが今の自分以上の大学を望めば、思いもよらぬ結果を出すことができるのも大学受験の醍醐味なのです。
もちろん、そのためには勉強のやり方と時間の使い方を変えていく必要があります。
「私のやり方は、いつもこうだったから…」というスタイルを進化させないといけないのです。
そういう意味で、受験勉強は挑戦の連続だと言えるでしょう。
「挑んでダメだったらショックだ」と思うかもしれません。
ですが、挑戦しない自分と挑戦する自分では、どちらが納得できる人生を歩んでいるか、という視点を大切にしてください。
せっかく皆さんの目の前には大学受験というチャンスがあるのですから、わかりきった枠内にとどまらず、未知の世界に冒険するつもりで大学受験に挑戦してもいいのではないでしょうか。
リスクが大きければ大きいほど、そこには想像を絶するような感動もあるのです。
困難を面白がると工夫が生まれ、生きる力になる
私の講義の中には、「スーパーレクチャー」という一風変わったものがあります。
これは、現代文の入試問題を題材にとりあげて、その長文に登場する言葉や概念を、徹底的に解説し尽くすという、前代未聞の講義です。
ひとつの長文から、化学や数学、量子物理学、哲学、医学、地学、歴史、文学、古典から、政治、社会問題、サブカルチャーに至るまで、科目という枠にとらわれず、学問全体のフィールドを縦横無尽に駆け回るのです。
この「スーパーレクチャー」では、生徒に深く考えさせるような問いかけをします。
そうするのは、頭がパンクしそうな状況に挑んでもらうため。
一つの設問に対して、わかりやすい丁寧な解説をしたせいで、わかったつもりになって思考を停止してしまうことを避けたいからです。
どんなことでも本気で向き合い、必死で考えるから脳が育ちます。
努力して獲得するから身につくのです。
正しい努力をするから、自分を肯定できるようにもなるんですね。
途中で苦しくなっても少しずつ前進し、自分で道を切り開いた者にしか会得できない高い感覚を、掴んで欲しいのです。
目の前に「壁」があっても、視点を変え、考え方を変え、工夫すれば誰でも乗り越えられます。
苦しいことがあったとしても、そのおかげで“高い感覚”に近づいている、という期待に変え、勉強を楽しんでください。
人工知能と人間の大きな違い「ひらめき」と「発想力」
最近は、食事の時間に塾生たちに人工知能の話をすることが増えました。
人工知能は、人間の脳を模したコンピュータです。
経験を積むことで、推論したり、学習したりして成長していきます。
機械ではありますが優秀で、失敗経験からも学習するので、経験をつむほどに精度があがっていきます。
ここまではご存知の方も多いでしょう。
まるで人間の学習と同じようなプロセスをたどっているように見えますが、人間と大きな違いがあります。
それは何だと思いますか?たとえば、オセロやチェス、将棋といったゲームをする人工知能の話を聞いたことがあるかと思います。
そのような人工知能は、まずルールを認識し、何をすればどんな結果になるかを学びます。
そして目標を達成するために、どんな動作をすればよいかを自ら導き出せるようになっていくのです。
ルールに則って対戦ができるようになるのですね。
かつて囲碁のルールを覚え、1兆回の対局を経験したAIが人間に勝つことができたのは、囲碁のルールを与えられたからです。
経験が多い分、学びが多かったのです。
では、人工知能と人間との明らかな違いはどこにあるか、というと、「人工知能はゲームを創ることができない」ということです。
人工知能は、人間が決めたルール内でしか動くことができません。
「こんなゲームがしたい」、「こんなルールで遊びたい」、「あんな夢を実現したい」、そういう発想がもてるのは人間だけです。
たとえ1兆回の対局を経験できたとしても、やはり人間に利用されるだけの都合のいいアルゴリズムに過ぎないのです。
そう聞くと、受験生は与えられた受験というルールで生きている人工知能みたいだ、と思ってしまうかもしれませんね。
人は受験だけでなく、社会に出てからも、仕事や業界のルールを知る必要がありますので、決められたルール内で勝負する力を鍛えるのは大切なことです。
与えられた範囲内で、高い能力を発揮していく習得力や表現力は、何歳になっても必要です。
もちろんムダなことではありません。
ですが、社会に出たら、それだけでは足りなくなる時が必ずやって来ます。
社会には、まだ答えのない問題がたくさんあるからです。
私自身、最先端の研究現場で働いていたので、過去のデータだけを相手にはしていられませんでした。
新しいアイデアやルールを生み出していかないといけない、物事を人とは違った目で見ていかないといけない、誰も考えたことのないようなテーマについて向き合わないといけないのです。
こういう問題は人工知能では対応できません。
ルールから外れた「ひらめき」や「発想」が要ります。
過去のデータでは解決できない問題を扱うのは、人間にしかできない仕事なのです。
似たようなことは大学受験でも起こります。
国公立の難関大学の入試となると、パターンを認識しにくいひねった問題が登場しますね。
新たな発想がないと解けない問題です。
こういう問題にチャレンジしたいと思っているような塾生には、過去のデータに頼らない「考え方」や「発想法」をレクチャーします。
脳の中に今までになかった回路が開かれる感覚を楽しみにしておいてください。
大学生活を充実させるために受験生がやるべきこと
皆さんが大学生になったら、どんな生活を送りたいと思っていますか。
好きなテーマを研究したい人や、面白いことに挑戦したいという人もいるでしょう。
大学では、高校生ではできなかったことが、たくさんできるようになります。
大学生活はもちろん、その先の人生も充実させていきたいなら、ぜひ「知る感動」を忘れないでください。
「人間とは何か?」を知るのが大学です。
すべての学問は、最終的に“人間”を知ることにつながります。
経済、経営、法律、工学、建築、文学、歴史、教育…、何を学んでも、あなたはきっと人間の新たな一面を知るでしょう。
「そうやったんか!」「勝手に思い込んでたわ!」「知らんかった!」って思うたびに人生が色鮮やかになります。
自分の知らなかったことを知って感動していく、大学にはそういうチャンスがいっぱいあります。
もし今、受験勉強と関係ないことで「これ何やろう?面白そうやな」と思ったことがあれば、大学生になったら追求できるよう別のノートにメモしておけばいいでしょう。
合格後の楽しみになりますからね。
これから受験を控えている受験生の皆さんは、今は自分のやるべきことに専念してください。
入試には期限があります。
今、何のために何をすべきか、といった目的に合わせて自分をコントロールしていくことも大切です。
私たちステップアップの講師は、皆さんの現在の成績を上げるのはもちろん、身に付けた学力が大学生になっても活きるよう指導しています。
そのため、機械のように定まった勉強をするのではなく、皆さんの好奇心や感性、やる気や夢が目覚める話をたっぷりと伝えています。
たとえば、内なるモチベーションに火が付く「大逆転の会」、おいしくて元気になる「食堂ゆにわのご飯」、体をほぐし脳がスッキリする「ウォーキングの会」などです。
勉強は頭だけでするのではなく、五感を働かせ、全身でするものです。
人工知能にはない「人間らしさ」と「真の学力」が組み合わさることで花開く世界があります。
あなたの受験勉強も、そんな未来をゴールにしていきましょう。
武田康(たけだやすし)
大学院時代は世界レベルの研究に従事する。
化学の鬼才。
長年の間、大手予備校で理系科目の指導を歴任。
専門外の物理、生物、数学、小論文も、常識と教養だけで、こともなげに満点をとってしまうほどの驚異の知性の持ち主。
指導を受けた生徒からは「雑談をするだけでIQが上がった」とか、「わずか3時間の授業で偏差値が10上がった」という、にわかには信じられないような体験が続出する。
南極老人いわく「知性だけではない。彼の、どこまでも深い愛情と忍耐に支えられた面倒見の良さは、塾生の一生の宝となるだろう」と。