お茶

茶話 目と目で会話する

©『神様に愛される一杯のお茶習慣』(自由国民社)撮影:竹田俊吾

茶肆ゆにわ店長・こがみのりから「見る」ということについてのお話をお届けします。

「ちゃんと見ることから始まる」

人はちゃんと見ているようで実は見ていない

突然ですが、お茶でも、人間関係でも、あなたは、「自分はちゃんと見ている」と思われますか?

人は「見て」いるようで「見えていないもの」がたくさんあります。

ともすると、自分が見たいものしか「見ない」傾向があるのです。

見たくないものは「見ない」。

つまり、視界に入っていても「見ていない」のです。

では、何を「見たくない」のでしょうか。

答えは、自分にとって「不都合なこと」となるすべての「人・物・事」です。

ここでは、人間関係をテーマにお話していきましょう。

例えば、「おはよう」と言った時の相手の顔が曇っていたとします。

すると人は、「あれっ、機嫌が悪いのかな?」と思います。

そこで実際に声をかけてみて、機嫌が悪かったり、八つ当たりされたりしたら、大変ですよね。

だから、たいていの人は、なるべく機嫌を損ねないように、その部分に触れないようにしてしまいます。

挨拶はするけれど、相手の表情をちゃんと見ないのです。

気が付かないふりをしたり、適当にごまかしたりして、その場をやり過ごしてしまう。

これを無意識のうちにやってしまっている人、けっこう多いと思いませんか?

過去の記憶のワナで人の気持ちが見えなくなる

人は、自分の「過去のものさし」でモノを見ます。

今までの記憶とか、印象とか、感情で、目の前にあるものや人が、どういう状態にあるかを判断しているのです。

相手を見て「この人、怒ってるな」と判断したとします。

その原因に思い当たる節がある場合、「きっと、僕がこういう事をしちゃったから、怒っているんだろうな」と、自分の中で思い当たる理由を探すでしょう。

そして、本人に確認をとることもなく、相手が怒っているという先入観で見てしまうので、そこで返ってきたリアクションは、すべて、「あ、やっぱり怒っている……」と、なってしまうのです。

でも、相手にちゃんと聞いてみたら、単なる思い込みだった、ということは案外、多いのです。

虚像で付き合う人間関係はウソ

人は、自分の思い込みで相手を見てしまうせいで、盲点ができます。

旦那さんが朝、「これから仕事に行くぞ!」と家を出ようとするときに、明らかに不満をためた奥さんがお見送りに出てきたら?

いかにも何か言いたげで、不機嫌な顔。そこに一言でも触れてしまったら、確実に何か出てきそう。

だからその時、多くの旦那さんは「これから仕事だから、その前の面倒ごとは困る」と言わんばかりに、その奥さんの顔を「見て見ぬふりをする」ことを選択するのです。

多くの人は、これと同じようなことを、お互いにやってしまっているのです。

たまにはゆっくりしたい、趣味に時間を使いたい、友人と外に出かけたい、仕事や家事で忙しい、というときに、面倒ごとは抱えたくない。

だから、視界に入れるけれど、「気が付かない」ふりをするのです。

お互いに目を合わせているようで、結局、見たくないものは見ない、希薄な関係です。

一緒にいる時間が長かろうと、どれだけ言葉を重ねようと、本当の意味で相手を見なければ、深いところでつながった関係性は作れません。

ずっと虚像で付き合ってしまうことになります。

その時点で「私は真剣に相手のこと見ています」と言いながら、「この人はこういう人であってほしい」とか「今まではずっとこうしてきたから、きっと今日もこうだろう」と思って、その人を見てしまっているのです。

お茶の道で成長できれば人間関係もよくなる理由

お茶で言うならば、虚像でものを見ていては、美味しいお茶は、はいりません。

茶葉をちゃんとひとつひとつ見なければ、その時によって形は違うということに気づけないからです。

お茶の世界は繊細。少しの差が、大きな味の違いを生みます。

同じ種類の茶葉でも、袋の上下では形がぜんぜん違っています。

下のほうは重みで多少割れていたりするから細かい。上のほうは茶葉がしっかり大きい。大きい茶葉と小さい茶葉では、同じ抽出時間・温度でいいわけがありません。

でも、そこまで見ることができていないとしたら、それは自分にとって都合のいいものを見るクセがついてしまっているから。

「モノをちゃんと見る」という習慣がないのです。

ですから、裏を返せば、ちゃんと相手を「みる」ということができたなら、それだけでお茶の味も、生き方も変わるのです。

「目の前の人との向き合い方」も、「自分にとっての嫌な出来事の受け止め方」も、「職場での人間関係」も、「周りにいる人からの自分に対する評価」も、180度変わるでしょう。

お茶は、自分の生き様をうつすものです。

周りの人からの自分に対する声も、上司からの評価も全部、自分が、相手を、どういう目で見ているかの裏返しです。

つまり、人は写し鏡なのです。自分の心が、相手の言葉や表情に表れているだけなのです。

まずはお茶をちゃんと見ることからはじめてみましょう。目の前のお茶の水面に映る自分の心と向き合ってみましょう。

時間はかかるかもしれません。

でも、少しずつでもそれができるようになったら、きっと、ごく自然に、人間関係もしみじみ味わい深いものに変化していきますよ。

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