もの選びというものは、大切なご縁を紡ぐということです。
茶肆ゆにわの店長・こがみのりから、茶葉を選ぶときの基準についてお伝えします。
何かを「選ぶ」時の「基準」
「さあ、お茶を淹れよう」と思っても、「はて、どんな茶葉を買えばいいのかな?」と初めは悩むことがあるかもしれません。
「何かを選ぶ時」って、茶葉に限らず「基準」が必要になりますね。
例えば、「いい暮らしがしたい」といっても、いい暮らしの「基準」があると思います。
マイホームがあればいい暮らしなのか、人よりも贅沢ができることがいい暮らしなのか、趣味の時間を取れたらいい暮らしなのか、その「基準」は人それぞれです。
値段、見た目、産地、品種。選ぶ基準はいろいろ
では、茶葉を選ぶ基準はどうでしょう?
人によっては選び方をお金(コスト)を基準にして、「金額が安い方がいいな」で選ぶ人もいれば、「値段がちょっとでも高い方がいいんじゃないか」と思って選ぶ人もいます。
また、「見た目でパッケージ買いしちゃう」人もいるし、ご縁や思い入れのある「産地で選ぶ」人もいるでしょう。
もちろん、「美味しいと思うものを選ぶ」人もいます。
価格なら、安いものは、毎日飲むとなれば、それはとてもありがたいのですが、例えば、100グラム300円くらいのお茶があるとしたら、私は、それは買わないと思います。
お茶の生産現場を見ていて、そのコストを見た時に、この値段だと不自然に「安い」のです。
その値段の裏を考えた時に、私は「選ばない」を選択します。
産地なら、自分の生まれ故郷のお茶もいいですね。
どこかへ旅行をしたのなら、その土地のお茶を飲むのもいいと思います。
また、品種なら、自分が初めて「美味しい」と思ったお茶、その品種を違う産地で飲み比べてみると面白いでしょう。
ある程度、一つの品種に慣れてきたところで、他の品種のお茶を飲んでみた時、その味の違いがわかったら、面白いかもしれません。
お茶屋さんの「人となり」で選んでみると・・・
私は、選ぶ「基準」は、基本的に、誰かが提示するものではないと思っています。
人それぞれに「基準」がありますし、選ぶ基準は人それぞれなので、絶対的な正解なんて存在しないのです。
ですから、そこは自由に選んでいただきたいのですが、敢えて私的な基準をお伝えさせていただくとすれば、まず、買う場所はデパートやスーパーといった量販店ではなく、専門店の「お茶屋さん」です。
誰がこのお茶を販売しているのか、その「人となり」を感じられるものを買う、これが、私の基準の一つです。
町にはたいてい一軒はあるお茶屋さん、そこに行ってみましょう。
お店の方と話してみて、遠慮せずに、「こんなお茶が飲みたいんです」とか、「今、どういうお茶がおすすめですか?」と聞いてみて、選んでもらうのもいいですね。
お茶のことを「知って」飲むのと、「知らずに」普通に飲むのとでは、味が全く違ってきます。
お茶選びの醍醐味はお茶の「物語」を感じること
いちばんの基準は、やはり、「人」だと思います。
売っている人と話してみて、「その人ともう一度話したくて行く」とか、「その人が勧めてくれるお茶が飲みたい」とか、あるんですよね。
銘柄とか産地とか、無農薬とか、有機栽培とか、自然仕立てのものとか、お茶を選ぶ基準はたくさんあるのですが、結局のところ、「信頼できる人が勧めてくれたものだから」ということが、何より確かな基準になると思っています。
私は、最初に出会ったお茶屋さんが、かなりお茶の世界にストイックに関わっている人で、とてもたくさんのお茶のお話、お茶の世界の裏側のお話まで、聞かせいただきました。
最初の一回だけは、普通にメニューを見て注文しました。
でも、ある時、その方が、「・・・っていう感じで見つけてきたお茶があるんですよね」と、自分がそのお茶と出会うまでのストーリーを語ってくれたのです。
ですから、その次からは、「何か面白いところのお茶がありますか?」「最近、見つけたお新しいお茶ってありますか?」尋ねるようにしました。
すると、「実はね、あるんですよ!」と言って、持ってきてくださるんです。
そして、嬉しそうに、そのお茶のことを話してくださる。
その時間が楽しくて、通っているうちに、私もお茶に詳しくなっていったのです。
こんな風に、お茶を売っている方とのやり取りを楽しむことが、一番の醍醐味じゃないかな、と思います。
今でも、その方のお店を訪ねる度に、「面白いお茶ありますか?」と、ずっと聞いています。
「今の」面白いものって、「1年前」の面白いものとは違います。
だから、私の「面白いお茶ありますか?」を聞けば聞くほど、相手の方も、「次の面白いものを探そう!」という、モチベーションになっているみたいです。
「ご縁」は本来、お金では買えず、価値のつけようもないほど、貴い。
今では、お茶の生産者の方の話をしていただいています。
その方の「人となり」「どういう人生を送ってこられたか」などを、聞かせていただいています。
そして、できたら、生産地まで行ってみます。
やっぱり、お茶を作られている方と、お話したいんです。
その方と話しているうちに、「この人、素敵だな」「この人のお茶だったら買ってみたい」と思ったら、次は「使いどころ」を探します。
そのお茶の特徴に合うシチュエーションを考えるのです。
お茶は、人と人との繋がりを紡ぐもの。
ですから、自分のお茶を選ぶ時は、「誰と、どういう時間を過ごしたいか」で選んでみてください。
するとそこから、過去の延長線上とは違う、新しいご縁が生まれるはずです。