親子は距離が近いことから、コミュニケーションが感情的になりやすいもの。
のびのび育ってほしいけど、周囲に迷惑はかけてほしくない、そんな両親の思いは、子どもにどう伝わっているのでしょう?
高橋家からの相談に、大学受験塾ミスターステップアップの講師・村田が答えます。
親が急かさなくても時間を守れる子になってほしい
―朝の幼稚園への支度の時、バスの時間があるのにぐずぐずしている様子を見ると、ついきつく言ってしまいます。時間を守る意識や自発性を促すってできないものですか?
そういった朝の場面ってどこのご家庭でもよくある光景だと思いますが、幼稚園児に自発性を方向付けるのは難しいです。
子どもが何かするたびに、「それはダメ」と否定してばかりだと、子どもは内なる衝動のはけ口がなくなってしまいます。
しつけとは言え、子どもって命令的に言われすぎると、どこか動物的になっていくんですね。
自分で「なぜダメなのか」を考えなくなるんです。
特に小学校ってそういった抑圧がスゴイですよね。
「〇〇しなさい!〇〇すべきでしょ!」ばかりです。
先に教え込んで、できなければ怒る。
だから子どもはイイ子ちゃんになって、親や先生の機嫌取りになってしまう。
自発性が育たなくなるんですけど、なかなか自分では気づけません。
子どもの中で抑圧されたエネルギーを発散しておかないと、いつか暴れたくなります。
幼稚園や小学校で衝動的に暴れだす子がいるのはそういう背景からです。
そのまま10代後半までいくと、自分が何をしたいかわからなくなるか、「親に言っても仕方がない」と諦めてしまいます。
親の顔色をうかがうのがクセになって、お母さんをイライラさせない、が人生の目標になってしまう。これは避けたいですよね。
―もちろんです、どう接すればいいですか?
この時期の子どもは愛情欲求が強く、親の気を引きたい、自分に愛情を向けてほしい、と思っているものです。
ですが、幼稚園や小学校に行くようになると周囲の目がありますから、親としては、いい子にしてほしい、社会のルールを守ってほしい、と思いますよね。
その意識が強すぎると、大人にとって都合のいい時だけほめたり、愛したり、といった態度になりがちです。
それが定着すると、子どもは「ありのままでは愛されないんだ」と思い、親の気を引くためにイイ子を演じたり、あえて反発したりします。
子どもは親からの愛情や承認がないと、言うことを聞けないものなのです。
ですので、そういった傾向を知ったうえで、お子さんに言葉で指示するのではなく、対話をしてあげてください。実感を伴う話をするんです。
たとえば「バスの時間に遅れるとどうなると思う?」「誰に迷惑がかかるかな?」「それでも平気?」と。
この年代の子どもは普段、内なる欲求で生きていて人のことを考える余裕なんてありません。
なので、一つひとつ尋ねてあげると立ち止まれます。
子どもの態度は、親のこころの写し鏡
―確かに、娘は気分の波が大きくて、見ていてイライラすることもあります
子どもと大人はペースが違います。
だから、子育てのテーマは「親のイライラを子にうつさない生き方をすること」だと私はよく伝えています。
子どもが落ち着かないとき、その原因が親の感情にあることって多いんです。
両親がイラだっていると、その感情がうつって子どももイライラし、その感情が行動や態度に表れます。
だから、子どもを見るときは、自分の“写し鏡”と思ってみてください。
お母さんの心に反応して子どもが衝動的になっているのかも、と。
そういう時はお互いに「なんでわかってくれないの?」と思っているものです。
子どもが言うこと聞かないときは、自分の心を整えてから仕切り直す方がうまくいきますよ。
たとえば夫婦間で不満があったりケンカ中だったりすると、空気がピリピリしますよね。
子どもって空気に敏感なのですぐ反応します。
我が家でも突然、子どもが泣き出したと思ったら、奥さんがイライラしていて、その原因が夫である私の精神状態にあったりします(笑)。
だから私はできるだけ仕事のイライラを解消して帰宅しています。
夫婦間でコミュニケーションがうまくいっていないときは、誰かに間に入ってもらうこともあります。
外から受けた邪気が原因なら、鼻うがいで浄化します。こ
ういった習慣があるだけでもだいぶ違いますね。
つまり、子どもを変えようとするのではなく、先に自分たちの状態をリセットする、ということです。
そうして家庭の中を“安心の気”で満たしていくことが大切です。
子どもに与えている無意識のメッセージに気づこう
-では、子どもは自発的だけど、うまくできてない時、親はどうサポートすればいいですか?
そこにどんなメッセージがあるかがポイントですね。
大切なのは、親が「失敗してはダメ」というメッセージを無意識に与えないことです。
子どもの失敗を心配してサポートするのではなく、信頼して見守り続ける方に意識をおいてください。
親って「失敗させたくない」と思うものですが、その裏では「周りに迷惑をかけてはいけない」と思っていることがよくあります。
それが伝わると子どもは失敗できなくなります。
「失敗したらあなたを認めない」というメッセージを受け取ると、子どもはツライです。
失敗してもいいんですよ。親は「失敗から何を学んだの?」と聞いてあげてください。
新しく学べると、失敗は悪い思い出になりません。
社会のルールを先に押し付けると、ルールを守る大人になるかもしれませんが、欲求が満たされないので「自分は親から信じられていない」というメッセージが心に残ります。
自発的になっているなら自由にやらせてあげてはどうでしょうか。
子どもを信頼してあげることからスタートしましょう。
ご相談後の報告をいただきたました!
村田先生のアドバイス通り、その夜、心を落ち着けて話してみました。
えみ:「お母さん、もう明日からえみを怒らなくても大丈夫だよ」
母 :「本当? もしバスに遅れたら、どうなるか知ってる?」
えみ:「うん。バスの運転手さんやお友達に迷惑がかかる」
この会話の翌々日には、お母さんが急かさなくてもバス停でバスを待つほど早くに準備ができたとのこと。
こんな朝は初めてだったそうです。一歩、前進しましたね!