神道研究科の羽賀ヒカルが、良い神社選びのポイントについてお伝えします。
知らなきゃ損! 神社ならどこでもいいワケじゃない!?
神社に行くと一言でいいましても、何を目的に参拝するかで、選ぶ場所は変わってきます。
日頃の感謝を述べに行く場合、自分の願い事を叶えてもらい場合、それぞれにふさわしい神社があるのです。
神様にお近づきになるという意味では、産土の神社にはお参りしておいた方が良いでしょう。
産土神は、自分が生まれ育った土地や、今、自分が住んでいる地域を守っている神様のこと。
そこに住んでいる人たちを見守ってくださっているので、今日この日まで過ごせたことに対する感謝とご挨拶に行く神社になります。
お願い事をしに行きたい人は、願望に応じた功徳をもつ神社にお参りするようにしてください。
ただし、神社ならどこでも良いというわけではなく、やはり良し悪しがあります。
そこで今回は、ここを押さえておけばOKという、「いい神社と、悪い神社の見分け方」をお伝えします。
神社はなぜ特別な空間なのか?
鎌倉幕府の基本法典「御成敗式目(ごせいばいしきもく)」の中に、神様と人との関係を表す、こんな言葉があります。
「神は人の敬によりて威を増し、人は神の徳によりて運を添ふ」
これは「どんな神様も、人から敬われ、大切にされることによって、その神力を発揮するようになる。また、そのようにして生まれる神力によって、人は良い運を与えられるものだ」という意味です。
これらのことを知っていると、どのような神社が良い神社なのか、その答えが見えてきます。
由緒正しき歴史ある神社
社歴の長い神社というのは、数多くの人が敬意をもって参拝してきた歴史があります。
例えば、熊本県山都町、阿蘇山のほど近くにある幣立(へいたて)神社。ここは、日本最古の社と言われていて、1500年もの歴史があります。
それだけ長い歴史を振り返れば、いったいどれだけ多くの人が参拝し、どれほどの思いを向けてきたでしょうか。
「場」はそこで起きたことすべてを記憶しています。
人々がそこで想ってきたこと、祈りを捧げてきた歴史は、そこにしっかりと刻まれているのです。
その「場」記憶は、空気となって人々に伝わります。
やさしく包み込んでくれるような雰囲気、しゃんとしていて心を糺してくれるような雰囲気など、場所によって感じ方が異なるのは、みなさんお分かりになると思います。
その空気感こそがそこに降りている神様の功徳であり、それに触れて自分のこころと溶けあうことで、運命を変えるような力が働くのです。
神社を選ぶときは、「どれぐらい歴史が深い神社なのかな、古い神社かな?」ということを見てみてください。
手入れが行き届き、綺麗に掃除されている神社
神道の考え方に、「ツミケガレを嫌う」というものがあります。
綺麗な空間、美しい空間にこそ、神様は宿ると考えられてきました。ですから、きれいか、汚いか、というのは非常に重要視するポイントになります。
例えば、こちらの写真は、奈良県にある橿原神宮。
そしてこの写真は名もなき神社です。
橿原神宮は、いつ参拝してもその境内は常に掃き清められていて本当に綺麗です。
対して2枚目の写真の神社は、雑草草木、生い茂り木々も手入れされておりません。
見ていただければお分かりいただけると思いますが、きれいか汚いかの差は大きいですよね。
誰が見ても、「神様はきれいな神社に降りるだろうな」と思われると思います。
社殿が綺麗に掃き清められているということは、神主さんや巫女さんに、神に対する〝敬〟の気持ちが根付いている証拠でもあります。
人が気持ちいいと思う場所は、神様にとっても心地の良い場所だと覚えておいてもらえると良いでしょう。
観光地化していない神社
書籍『神社ノート』にも記しましたが、今は、さびれた神社、神々しくない神社、エネルギーを感じない神社…一見、良さそうにみえても実は神様が降りてない、という神社が多くなってきています。
その理由は、人が神様に向ける〝敬〟が失われつつあることにあります。
特に、大きくて有名な神社であるほど、昼間は外国人参拝客が多く、喋り声、笑い声、記念写真…。
「聖地」というより「観光地」になっているような神社が、かなり多くなってしまっています。
「祈る場所」や「神様と繋がる場所」ではなく「風景を楽しむ場所」になってしまってるために、長年、神社参拝をしてきた私でも、本当に祈りにくいですし、気も良くありません。
逆に、交通の便が悪くて、なかなかお参りしにくい神社は観光地化しにくいので、現代でも昔ながらの清々しい空気が保たれています。
しかも遠路はるばる、苦労してでも神社にお参りする人は、ほぼ例外なく神様に敬意を持って参拝されています。
ですから人里離れた、観光地化されていない神社を選ぶといいでしょう。
また、おすすめの参拝時間は、人が少なく、まだ荒らされていない清々しい空気が残っている早朝がおすすめ。
神社チャンネルでも、詳しく解説しておりますので、そちらをご覧ください。
どうしても、どこの神社に行ったらよいのか迷ってしまうという方は、書籍『神社ノート』に全国のオススメ神社一覧を載せているので、参考にしてみて下さいね。
どんな場所でも神社になる
Photo by NITTA kimihiko
自分の幸せのみならず、家族の幸せ、仲間の幸せ、すべての人たちの幸せを、ただただ願う純粋な祈り。
その積年の祈りこそが、神様の受け皿となり、霊験あらたかな神社の功徳が生まれるのです。
元気なとき、ハッピーなとき、笑えるとき、人はすすんで他人の幸せを祈れるものです。
悲しいとき、苦しいとき、辛いときは、神様にすがる思いで、自分の幸せを祈りたくなるもの。
そのどちらでもない多くの日常では、神様への〝敬〟をすっかり忘れてしまう。人間というのは、そういう都合のよい生き物なのかもしれません。
けれど、私の願いは祈りとともに生きることが、日本人にとっての当たり前になること。
そして、日本中のいたるところが、神社さながらの御神域になることです。