前回に引き続き、牛窪家からのご質問にお答えする村田明彦の子育て論。
今回は、娘に自立した人生を歩んでもらうために、今から親が心がけるべきことを伺いました。
“子離れの年齢”、“親も生まれ変わる”など興味深い話題で盛り上がりました。
大学受験をするのは、「親」のため?!
―高校生ぐらいになると、子どもって自然と自立するものでしょうか?
私たちの塾の生徒は大学受験を控えた高校生や浪人生で、将来を考え始める年齢ではありますが、よく話を聞いてみると自分でしっかり考えている子は少ないですね。
親の影響で受験に向かおうとしている子が大半です。
つまり、親が「塾へ行きなさい」「将来こういう職業につきなさい」と言うからとりあえず来た、という子が毎年一定人数います。
そのような「いい大学に入って親に認められたい」という気持ちが根底にあるということは、イイ子を演じて家に居場所をつくろうとしているってことです。
自己肯定のために大学に行こうとするのは、やはり健全ではありませんし、自立とは言えないですね。
そのクセが強いと、なかなか主体的になれません。
口では「いい大学に行きたい」と立派なことを言うけど、自発的に勉強しないんです。
それまで親が代わりにやってきたから、一人になるとどうしたらいいかわからないからですね。
では、自発的に行動する子の親は、子どもの頃どう接していたのですか?
ほぼ決まって「放任主義」です。
もちろん幼少期の頃は全面的に親にやってもらっていますよ。
だから愛情面は満たされているんです。
そして、ある時期で親が“放任モード”にシフトしています。
この「シフトする」のが大切です。
いつまでもシフトできず、高校生になっても幼児を扱うように子どもと接している親御さんって案外多いんですよ。
逆に、幼少の頃から子どもを放任してエネルギーを全くかけてこなかったら、何歳になっても自発的にがんばっていく気力がわきません。
なので、幼少期の間はしっかり見てあげてください。
よく観察して自立の兆しが出てきたら自由にやらせてあげることです。
「あんた、こうでしょ!」って親が代わりにやってあげる方が早いから、ついやりたくなるものですが、そこはぐっと我慢して、子どもから離れていくようにするといいですね。
接し方の分岐点は15歳 思い切って子どもから離れよう
そういうことは、何歳から考えたらいいのですか?
幼少期は親が代わりにやってあげることが必要ですが、その頃から“ゴールは自立”と思っておいてください。
将来、人生の岐路に立った時に、親の価値観に縛られず、自由に選択できるように育ててあげることが大切なんです。
昔の日本の成人年齢は15歳でした。
元服という成人の儀式が15歳で行われていたんです。
なぜ15歳かと言うと、自我が芽生え始めて“私らしさ”がはっきり出てくる年齢だからです。
逆に言うと、その年までは自我はあまり出てきません。
全面的に親の価値観の影響を受けているからです。
ですので、10代前半までは補助的に接してあげて、10代後半からは思い切り子どもから離れていくといいですね。
外国では自立のために幼い頃から一人で寝かせていると聞くのですが、それって大切ですか?
確かにそれも一つですが、それだけではありません。
一人で習い事に行かせるとか、一人で買い物に行ってもらうとか、いろんな形で一人で何かに挑戦させるのはいいと思います。
ですが土台に「両親からの安心がある」というのが前提です。
その前提で一人の行動を広げていくと自然と自発的に行動するようになっていきます。
私たち過保護になりそう! どういうことに気をつけたらいいですか?
時折「やりすぎてしまってないかな?」って振り返ることができれば大丈夫です。
たとえば、一人で何かをやらせて失敗したとします。
そういう時は叱るのでもなく、放っておくのでもなく、待ってあげてください。
守ってあげるスタンスがいいですね。そうすると子どもは失敗から自分で学んでいこうとします。
親はその学んでいくサポートをしてあげられたらベストです。
いつも新鮮な目で子どもと向き合うために
つい自分が育てられたように、子どもを育てたくなります。
その気持ちもわかります。
ですが、「自分の両親をモデルに…」と考えるときは、子育てのスタンスが固定化しているかもしれません。
大切なことは親も変化していくことです。
子どもは変化が激しいです。
去年好きだったことも、今年には変わっていたりします。
性格も、小学生の頃はおとなしかったのに、中学生でリーダーになることもあります。
子どものことを「こういう子だ」って決めつけないで、変化を受け入れてください。
子どもさんが誕生日を迎えるたびに、親御さんも「新しい親に生まれ変わろう」、と思ってみてはどうでしょうか。
うちは女の子ですが、女の子の親として気をつけておくべき点ってありますか?
女の子の場合、母親の接し方に特徴が出てきます。
母親が娘に自分の人生を重ねてしまうんですね。
娘に“自分”を見てしまって、口出ししすぎてしまう傾向があります。
男の子の場合は、成長するにつれて父親をライバル視するようになっていきます。
それは母の愛情を独占したいからですが、いわゆるマザコンの傾向ですね。
母親が喜ぶから何かをやろうっていう意識が出てきます。
大学受験もその対象になりやすいですね。
ですので、どちらの場合も気をつけてほしいのは、母親の価値観を押しつけないことです。
「子どもの人生は子どものもの」という姿勢で接してあげてください。
“一人の人間”として見てあげるんです。
具体的に「こうすれば正解」というものはありません。
人生の大きな流れの中で試行錯誤しながら、こういう接し方はどうだろう、こんな愛情はどうだろう、と模索していきましょう。
それが子どもに愛情をかけるってことだと思います。
試行錯誤が大切なのですね。ありがとうございました!