受験は心理戦。
大学受験でうまくいくかどうかはメンタルの強さ次第です。
問題練習に必要な集中力も、暗記に必要な忍耐力も、試験本番に必要な潜在能力も、すべてメンタルの強さに比例します。
そこで、どんな状況でもブレないメンタルを育て、ヤル気を下げる罠にはまらない秘訣を塾生たちに定期的にお話しています。
入試直前に銭湯に通った理由
せっかく努力したのに、本番で力を出し切れなかった。
不完全燃焼に終わった。
それほど悔いが残ることはないだろう。
今回は、私の浪人時代のエピソードから、本番で実力を出しきるために欠かせない考え方についてお伝えしよう。
12月のある朝のこと。
熱っぽいなぁと思って体温を測ったところ、37.4度あった。
高熱というほどではないし、勉強しようと思えばできる。
しかしその時、私の頭には、ふと昨年の悪夢が浮かんでしまったのだ。
「このまま熱が入試まで続いて、実力を発揮しきれないんじゃないだろうか・・・」
不安から相談に行った私に、南極老人は「熱が出るということ自体は悪いことではない」と教えてくれた。
熱が出るのは、体が冷えているサイン。
もっと体を温めてゆるめようとする、自然な働きだ。
多くの人は、熱が出ることを良くないことだと捉えがちだから、すぐに解熱剤を飲んで熱を下げようとする。
けれども実は、これは逆効果だ。
体が熱を出そうとしている状態にもかかわらず、上から押さえつけてフタをするようなものだからだ。
むしろ、こういうときは体をしっかりと温めて、熱を出し切らせてあげればいい。
その時に私がとった方法は、温泉やサウナで身体を温めることだった。
ちょうど近くに銭湯があり、センター試験まで毎日欠かさずに通うようにと言われた。
往復30分。
近いとは言え、温泉にもサウナにも入るとなると、一回あたり2時間ほどかかってしまう。
私は思わず、南極老人に「勉強はいいんですか?」と尋ねた。
すると「柏村くんに必要なのは勉強じゃないからね」と一言だけ。
この時その意味を理解した訳ではなかったが、私は南極老人の言葉を信じることにした。
そしてセンター試験直前にもかかわらず毎日スーパー銭湯に通い始めた。
体の熱を出し切るためには、体の芯から温める必要がある。
一番良くないのは、熱いお湯にサーっと入って、のぼせてきたらすぐにあがるという方法だ。
これでは体の表面部分は温まるかもしれないが、体の芯まで温まることはない。
体の芯まで温めるポイントは、いかに体の粗熱をとるかにある。
具体的にはまず、サウナに入って体を温めた後、水風呂に入る。
そうすることで体の表面の粗熱がとれる。
こうしてサウナと水風呂に交互に入ることで、体の芯まで温めることができた。
熱があっても「大丈夫」と思えたのは・・・
南極老人のアドバイスのおかげですっかり体調は元気になったが、全てが順調に進んでいくかと思うとそう簡単にはいかなかった。
銭湯に通うようになって体温は上がらなくなったが、平熱に戻ることもなかったのだ。
まさに一進一退。
前年であれば「なんでアドバイス通りしているのに治らないんだ。このまま入試を迎えたらどうしよう・・・」と不安になっていたことだろう。
しかしこの時は、焦りも不安もまったく湧いてこなかった。
ただ自分のやるべきこと、目の前のことに全力を注ぐだけだ、と思えたのだ。
このように落ち着いていられたのは、南極老人からあるエピソードを聞いていたからだ。
南極老人が受験生だった時、多少の体調不良なら「あえて」模試を受けに行っていたそうだ。
そしてそんな時は決まって自分の実力が発揮できて、成績が良かった(全国模試一桁順位だった)と。
なぜ、良い成績が取れたのか。
この話を聞いたとき、不思議に思って私は南極老人に質問した。
すると体調が万全でないときは、余計な力が抜ける。
力むことがないから、いつもより思考も柔軟になって、思いがけず良い成績につながることがあるのだという。
いざという時の準備が決め手
「あなたは入試本番の日に37.5度の熱が出た場合は、入試を休みますか?」
そう聞かれたらきっと、ほとんどの受験生は「休まない」と答えるだろう。
なぜなら入試を受けなければ、合格する確率は0だからだ。
入試本番に体調を崩すことは誰でもありえるわけだから、事前にそのシミュレーションをしなかった受験生は、甘いと言わざるを得ない。
このように考えれば、たとえ受験中に体調を崩したとしても「よし、これで入試本番に体調が悪かったときの練習ができる」と良い方向に捉える事ができる。
体調が悪いとき、一日の勉強時間が短くなったとしても構わない。
「体調が悪くても勉強した」という事実をつくることが自信につながるのだ。
「体調が悪くても、案外勉強できるな」と実感できれば、儲けもの。
そう思えたら体調の良し悪しに動じないメンタルを手に入れることができる。
さらにもう一つ大きかったことは「今年一年、南極老人の教えを自分は忠実に実践した」という自負が芽生えたことだった。
「先生を信じてここまでやってきたんだ、これで合格しないはずがない」と言えるだけの一年を過ごしてきたのだ。
いざという時の準備が整ったからこそ、不安に襲われることなく入試本番で実力を発揮し、センター試験をはじめ、京大・早慶上智・関関同立と受験した大学すべてに合格することができた。
本番で実力を出しきるためには、どんな状態であっても大丈夫、と思えるメンタルを作っておくことが大切なのだ。