4月に入り、新生活をはじめた方もいらっしゃるでしょう。
新しい出会いの時、初めのうちは、すれ違いやトラブルに見舞われることもあり、心も体も不安定になりやすいタイミングでもあります。
そのため、この時期に、昔の日本人が特に意識していたのが『浄化』の習慣でした。
私自身、心に邪気が溜まっていたら、美味しいお茶は淹れられません。
どんな時も、自分の心を清浄に保つことが、茶人の務めでもあるのです。
心身を清らかにする日本人の浄化習慣
どんな場所でも、そのまま手入れしないでいれば、ホコリがたまり、汚れていくように、人の心や体も意識しないでいると、次第に汚れていきます。
特に、イライラや不安など、ネガティブな想念を抱えた人が多い場所は、邪気も多く、自分自身の心も荒れやすくなるものです。
また、自然とのふれあいが少なくなった時代の背景も、心の汚れを助長させている一因といえるでしょう。
本来は、大自然の中で風に吹かれたり、木漏日を浴びたり、透き通る川の流れをただ眺めたりしたら、それだけで心は安らいでいきます。
自然には、そうした浄化作用があるのです。
しかし現代は、忙しい世の中。
常に浄化を習慣にして、自分の身は自分で守らないと、きれいな心身を保つのもむずかしいのです。
「病は気から」とも言うように、心が荒れた状態が続くと、いずれは身体まで不調になっていきます。
清らかな心と身体を保つには、浄化を習慣にすること。
心の乱れも、身体の不調も、浄化をするだけで解決してしまうことが意外と多いものです。
昔から日本人はそれを知っていたのでしょう。
日常の習慣には、浄化になっていることがたくさんあります。
身近な例でいえば、おしぼりで手を拭くとか、玄関に水をまくとか、お香を焚くとか。
お風呂に入ったり、洗顔するのも浄化のため。
じつは、ひな祭りの行事も、浄化の習慣があるのです。
過去に執着せず、前に進む
今年の4月7日は旧暦のひな祭り。
「ひな祭り」の「ひな」の言われのひとつに、こんなお話があります。
古代日本には、「一」から「十」の段階の教えがあります。
一・二・三・四・五・六・七・八・九・十。
「一」から「十」の段階に達した者を「一十」と言い、「一」から「七」の段階の者を「一七」と言いました。
ひな段が七段なのもそのため。
「一七」まで上がったら、「八・九・十」の、より高い概念の段階へと上がっていくことを表しているのです。
そこに至るまでには、色々と悲しいこと、辛いこと、記憶に突き刺さるような出来事もあるでしょう。
しかし、それらを引きずっていては、次の段階には進めません。
より高みへと進むためには、これまで得たものを、きれいさっぱり流して身軽になる必要があるのです。
そのため、ひな祭りの〝桃の節句〟には、「厄払い」「邪気払い」という意味が込められています。
神話に伝わる〝祓い清める〟ことの大切さ
その昔、イザナギが、黄泉の国から逃げ帰る時、桃の実を投げて、化け物たちを退け、助かったという説があります。
それ以来、イザナギは、黄泉の国の出口に大きな岩を置き、「もう、過去を振り向かない。只今を生きる」と誓いました。
そしてイザナギは地上に戻り、全てを水に流すため、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原にて、禊祓いをされました。
そして、その瞬間、たくさんの神々がお生まれになりました。
神話の中では桃の実が「破邪」のはたらきを持ち、化け物を追い払いましたが、私たちも、新しい段階に進むには、自身の中にある過去からの悪いクセや、失敗パターンと決別する必要があります。
そして、過去の嫌な思い出が、良き思い出に置き換わり、そこに悟りをお迎えしたとき、「日常で神話を生きる」「日々実践する」道を生きることができるのです。
酒風呂で浄化をしよう
ご家庭で簡単にできるおすすめの浄化方法の一つが「酒風呂」です。
酒風呂とは日本酒を入れたお風呂に入浴する、という浄化法。
清酒は古くから浄化にも使用されてきました。
お酒を入れることで、気や血の巡りがよくなります。
体の毛穴がより開くので、体内の毒素や邪気が、汗と一緒に体外に出ていってくれるのです。
しかも、体の芯までポカポカに温まります。
さらには、内蔵機能も活発になり、むくみが取れて、お肌がツルツルになるのです。
お酒は、米、麹、水だけを原料とする純米酒を選ぶこと。
純米酒は浄化力が高く、酒風呂に向いています。
原料に「醸造アルコール」が含まれていないお酒を選ぶと良いでしょう。
わたしは、「ゆにわマート」で取り扱っている料理酒「福来純」を風呂桶に対してコップ1杯ほど入れています。
浄化力を高めたい時は、入れる量を増やしても構いません。
さらに浄化力を高めたい場合は、浄化の働きを持つ神道の言葉「大祓祝詞」を唱えます。
酒風呂の効果と相まって、抜群の浄化作用があります。
黄泉の国から地上に戻ったイザナギをイメージして行うと、よりケガレを清めることができるでしょう。
そして、心身共に気持ちよく浄化されたら、ぜひ、ご自分のために、それから大切な方々のために、お茶を一杯淹れてみてください。