人生に迷ったら、「お茶」に聞いてみよう。
良縁を繋ぐお茶屋「茶肆ゆにわ」店長・こがみのりが語る茶話。
お茶には、人が生まれ変わるための秘密が眠っています。
その深遠な世界に触れてみてください。
産土神の名前をいただいたお茶
産土神とは、神道において、その人が生まれた土地の守護神を指します。
その人が生まれる前から死んだ後まで守護する神様で、他所に移住しても一生を通じて守護してくれると言われています。
例えば、茶肆ゆにわだったら、産土神は石清水八幡宮になります。
「お茶を通じて、神様の功徳が皆さんに行き渡りますように」と願って、茶肆ゆにわのお茶は、すべて神様の名前になっています。
茶葉の産地や特徴によって、それに対応する神様の名前をいただいています。
普段、お茶を飲むときも、その産地に思いをはせてみる。
そして、その土地の神様の功徳をありがたくいただく。
そうすると味わい方も変わりますし、本当にその功徳によって、あなたの性格の良い面が引き出されますよ。
お茶の産地を訪ねてみる
お気に入りのお茶があったら、そのお茶の畑や産地を訪ねてみませんか。
きっと、ますます愛着が湧いて、茶葉と仲良しになれることでしょう。
わたしは、お店で扱っているお茶の茶園を見に行き、生産家さんからお話を伺うことがありますが、どなたも例外なく、心が温かい方ばかり。
飲む人の幸せを願う気持ち、尋常ならざるこだわりや熱意に触れると、お茶が美味しいのも頷けます。
そして、その近くにある代表的な神社、主にその地域の一宮に参拝する、というのがお決まりのルート。
その神社の〝空気〟を覚えて帰ります。
帰ったら、覚えてきた空気を思い出して、心の中で再現して、まるでその神社にいるかのような気分に浸りながら、お茶を淹れてみる。
すると不思議。
それまで感じられなかった味や香りが出てきたり、そのお茶の魅力が際立ってくるのです。
そのお茶のことを語るだけで、温かい気持ちになる。
そんな茶葉と出会えることは、お茶を嗜むものにとって、とても幸せです。
煎茶「神足別」の産地
煎茶「神足別」の産地、静岡県の生産家さんを訪ねた時のお話です。
茶畑に行くまでは、山道をジェットコースターのように軽トラックで登っていきます。
あと30cm離れたら崖に落ちる、みたいな道をギリギリで運転し、UターンならぬVターンの連続で、登っていきました。
そして、茶畑に着きました。
本当に、きれいでした。
黄金色の畑が、一面に広がっていました。
スタジオジブリ映画『風の谷のナウシカ』のラストシーンで、ナウシカが「青い服を着て、まるで金色の野原を歩いているみたい」に見えますが、まさにそんな感じでした。
近くにきれいな水をたたえた小川が流れていたり、トトロのいそうな大きなご神木を、さわやかな風が吹き抜けて行ったり、黄金色の茶畑の中で感じる太陽の光がまぶしかったり、とても、きれいなところでした。
五感をフル活用する
ついつい、人はただ、その場所に行って、神社参拝しただけで、功徳をもらえた気になってしまいますが、そうではなくて、五感をフル活用させる必要があります。
- 目で見て感じる功徳
- 波の音や風の音のように音で感じる功徳
- 触れて感じる功徳
- 香りで感じる功徳
- 舌で感じる功徳
さまざまな功徳があります。
ですから、先ほどの「神足別」の産地での話のように、五感を使ってその土地の功徳を楽しむ、といったことをやった方が良いんです。
案外、自分では気づかないうちに、功徳が入っていることがあるからです。
ここに、朝茶の精神が活かされてきます。
いかに自分の五感で繊細なものに気づけるようにしていくか、そういうことを日々の日常の中で感じるということを意識してもらうと、すごくいいと思います。
「朝茶で五感をフル活用させましょう」とお伝えしているのは、つまり、神社参拝に行った時と同じだからです。
朝茶で「神様をお迎えする」「五感を磨く」というのは、実は、神社参拝の時にするのと同じことをやっているんです。
宮地嶽神社
「神足別」は、実は、わたしの地元、福岡県・宮地嶽神社の、神様の名前の一部をもらっているお茶です。
一般的に、「何事にも打ち勝つ開運の神」と言われる神様です。
石段を登りきったところにある、本宮の前から、ご神域の海に続く、通称「光の道」があるのですが、この道を見た時に、わたしの師匠、北極老人の奥様がひとこと、「わぁ、ここから海に飛び込めそう!」とおっしゃいました。
その時、師匠は、「ああ、それがまあ、功徳やね」と教えてくださいました。
つまり、人は、生まれてくる時とか、人生が変わる時とか、何か決断する時って、見たこともないところ、こわいところに飛び込んでいかなくちゃいけないんですが、宮地嶽の神様は、その後押しをしてくださるんです。
と同時に、自分の人生が新しく変わる時には、矛盾がたくさん起こります。
この矛盾を見はじめたら、こわくて、前に進めなくなってしまう。
そんな時に「その矛盾を一緒に背負ってあげるから、行きなさい!」って押し出してくれる神様です。
何か自分が変わりたいときに、弱さをなくしてくれるわけではなくて、その弱さに「打ち勝つ」功徳をくださいます。
誰かに勝たせてもらうわけでもなく、乗り越えさせてもらうわけでもないし、自分で勝たなければいけない。
煎茶「神足別」を飲むときには、ぜひ宮地嶽神社の神様にも、思いをはせてみてください。
もちろん、茶肆のお茶でなくても、生産地、生産家さんに思いをはせ、産土神の功徳をいただくことはできます。
いつでも、どこでも、神様に愛される一杯のお茶を、楽しんでくださいね。