お茶

場はみんなで作るもの

人生に迷ったら、「お茶」に聞いてみよう。

良縁を繋ぐお茶屋「茶肆ゆにわ」店長・こがみのりが語る茶話。

お茶には、人が生まれ変わるための秘密が眠っています。
その深遠な世界に触れてみてください。

準備で決まる

何事も、準備で決まります。

感動の瞬間は、小さな準備の一つから

ひとつ、お話をしましょう。
わたしの師匠、北極老人が若かりし頃(北極青年)の話です。

北極青年の念願が叶って、ある高名な占いの先生に鑑定をしていただけることになりました。
しかし、鑑定料は高額で、10分一万円です。もちろん、北極青年は、その10分に勝負をかけました。

21日間連続で、神社にお百度参ひゃくどまいり(どうしても叶えたい願望がある時、神社の賽銭箱から鳥居の間を、祈願しながら100往復すること)をしました。
できる限り、自分の状態を良くすることに努められて、懸命に祈られました。
「空前絶後の悟りが得られますように」
「いただいた功徳は、必ずや世のため人のために還元させていただきます。」

はたして、その願いは聞き届けられました。
それも、今まで二万人の鑑定をしてこられた、占いの大家の先生でさえも
「こんな鑑定は初めてだ、本当にありがとう」
と驚愕、感謝されるほどの、素晴らしい鑑定になったのだそうです。

つまり、鑑定を「する側」(占いの大家)は、「受ける側」(北極青年)の姿勢によって、ますます才能が引き出されたのです。
自分では想像できないほどの「冴えた」インスピレーションを降ろすことができたことで、話す内容が変わった。出てくるエネルギーが変わったのです。

お茶会は、おもてなしを「する側」「受ける側」の両者で作るもの

わたしが主催するコミュニティ「こが塾」で、先月、お茶会「へうげの宴」が開かれました。
このお茶会では、昨年のわたしの初めての半年間講座「悟りのお茶講座」に参加したメンバーが企画、準備、進行を行いました。

お茶会の半年前から何度もミーティングを重ね、リハーサルをして、おもてなしを「する側」「受ける側」双方の動きを確認し、最終確認をして、お茶会当日を迎えました。


空間は、もてなす人と受ける人で作られる

わたしは裏方にまわって、事の経緯を見守り、時には相談を受けて、アドバイスをしました。
おもてなしを「する側」というものは、細部にまで神経を行き届かせなければなりません。当日までの道のりは、そう簡単なものではありませんでしたが、メンバー全員が、当事者意識を持って、
「どんなお茶会にしたいのか」
「どんな意識で臨むのか」

妥協せずに話し合いを重ね続けました。そして、どんなに小さなことでも、不明な点があれば、すぐに報連相をして、丁寧に解決に努めていきました。

しかし、このお茶会は、どんなに、おもてなしを「する側」が準備を重ねてきたとしても、「受ける側」の姿勢によって内容が大きく変化します。

たとえ、「受ける側」が、さほど準備をしなくても、お茶会に行けば、美味しいお茶をいただくことはできるでしょう。
いつもと違う、特別な準備がされた茶肆ゆにわのお座敷で、「する側」のメンバーが心尽くしのおもてなしをしてくれたなあ、それくらいの感動は得られるかもしれません。

しかし、

  • お出迎えの方の礼儀正しさに触れた瞬間に、心の準備が整う。
  • 案内の方の優しい心配りに、ほっと心がほぐれる。
  • お茶席を待つ間に出されたお茶を味わううちに、自然と期待感が高まっていく。

・・・と、このように準備が整った状態で臨むことができれば、「する側」「受ける側」の人生観さえ180度変えてしまうような、「運命を変えるお茶会」にもなり得るのです。

啐啄同時そったくどうじ

禅語である「啐啄同時そったくどうじ」。
これは、卵が孵化ふかするときは、卵の中のヒナが殻を自分のくちばしで破ろうとし、また親鳥も外からその殻を破ろうとする、そのタイミングがピタッと一致するからこそ、ヒナ鳥はこの世に生を受けて外の世界に出ることができる、という意味です。

このように、「迎える側」の
「いい時間が過ごせますように」
「お客様の魂の中に眠る『美しいもの』が出てきますように」

という祈りのエネルギーを肌で感じた「受ける側」も、「迎える側」に応えてエネルギーを投じれば、空気はどんどんあたたかく、そして熱くなって上昇していきます。

お互いの魂が光り輝き共鳴し合う、まさに「啐啄同時」の瞬間です。

日常で生かすには

さて、今日のお話を、実践するためにはどうしたらいいでしょうか。

北極青年の話と、「へうげの宴」の話は、そのまま、神社参拝にも、仕事にも、家庭にも、何にでも当てはめることができます。

あなたの日常にも、当てはめてみましょう。

神社参拝なら、

  • 日頃から、心身を清め、祈り、毎日を懸命に生きる。
  • 参拝当日は、正装をして、お玉串料をお納めして、熱く祈る。

そうすれば、きっと神様からおもてなしを受けられるでしょう。

仕事なら、おもてなしを「する側」「受ける側」どちらもあり得るでしょう。
生活するための収入を得るだけのために、我慢して働くのではなくて、「仕事を通して社会に貢献するんだ」と高い志を共にする仲間たちと信頼関係を築く場ができていけば、いいですね。

  • 片付けや掃除をして、場をととのえたり、仲間に美味しいお茶を淹れてあげたり。
  • 時には、腹を割って本気で話し合ったり。
  • 仲間のアドバイスに素直に耳を傾けたり、元気のない仲間を励ましたり。

家庭なら、ただリラックスしてだらだらと過ごすのではなくて、

  • 心からの安心感で満たされ、エネルギーを充電する場にする。
  • 明るくてあたたかい家庭で、美味しいごはんを囲み、話をし、ぐっすり眠ることができる。

魂が純粋に喜ぶ毎日は、家族ひとりひとりが、おもてなしを「する」「受ける」ことで、着実に作られていきます。

さて、あなたの「おもてなし」は、思い浮かびましたか。
ぜひ、小さなことから、毎日の「準備」を楽しんでくださいね。

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